心理学

怖いと体が固まる・腰が抜けるのはなぜ?「戦うか逃げるか」の前に“止まる”モードがあった

怖いと体が固まる・腰が抜けるのはなぜ?「戦うか逃げるか」の前に“止まる”モードがあった

読む前に予想してみよう!

怖い時に体が固まるのは、何もできずに止まっている「無駄な」反応だ

研究カード(どんな研究?)
対象
女性
規模
50人(姿勢と心拍の測定)ほか
研究の種類
実験研究+レビュー
確かさ
★★★☆☆
補足
実験研究+レビュー
補足
★★★☆☆
3秒でわかる

危険を感じた瞬間、体はまず動きを止めて心拍を下げる「フリーズ(すくみ)反応」を起こす。動物と共通の防御反応で、怒った顔を見るだけでも人の体のゆれが小さくなった。

ひとことで言うとこわい時に固まるのは、体が「動くな、よく見ろ!」モードに入るから。

もくじ
  1. 「止まる」は立派な防御作戦
  2. 怒った顔を見るだけで、人の体も「すくむ」
  3. 「腰が抜ける」はその先の段階かもしれない
  4. まとめ

夜道で突然、背後から物音。体がピタッと固まって、声も出ない。お化け屋敷で足がすくむ。ひどく驚いたときに「腰が抜けた」ように力が入らなくなる人もいます。

答えを先に言うと、これは体の故障ではなく、動物と共通の防御反応です。危険を感じたとき、体は「戦うか逃げるか」の前に、まず動きを止めて心拍を下げる「フリーズ(すくみ)反応」を起こすことがあります。そして恐怖がさらに強いと、体の力が抜けて動けなくなる段階まであると考えられています。

01「止まる」は立派な防御作戦

ウサギやシカが、天敵に気づいた瞬間にピタッと動きを止める様子を見たことがあるかもしれません。

動く物は目立ちます。捕食者の多くは、動くものに反応して襲いかかる。だから、まず止まって目立たないようにし、相手をよく観察するのは、生きのびるための合理的な作戦なのです。

02怒った顔を見るだけで、人の体も「すくむ」

人でも同じことが起きるのでしょうか。

写真の怒り顔という「ささやかな脅威」でも、体は動物のようにわずかに固まっていたのです。これは人の体にもフリーズのスイッチが組み込まれている証拠と考えられています。

動物も人も、危険を感じた瞬間にまず「止まって、観察する」
動物も人も、危険を感じた瞬間にまず「止まって、観察する」

03「腰が抜ける」はその先の段階かもしれない

恐怖への体の反応は、危険の近さや強さによって段階的に変わると考えられています。これを防御カスケード(防御の連鎖)と呼びます。

2015年の精神医学の総説(Kozlowska さんら)は、その流れをおおまかにこう整理しています(この総説ではフリーズを「戦うか逃げるかが保留された状態」と位置づけています)。

  1. 気づく・身構える(覚醒)
  2. 戦うか逃げるか
  3. すくむ(フリーズ)
  4. 固まって動けない(強い恐怖で体がこわばり、反応できない状態)
  5. 力が抜けて崩れる(筋肉の緊張がなくなり、ときに気が遠くなる)

「腰が抜ける」は、医学用語ではありませんが、4〜5の段階、つまり恐怖が極限に近づいたときに体の力が抜ける状態にあたるのかもしれません。自分の意思で動けないのは、意気地がないからではなく、体が自動的に選んだ防御モードなのです。

04まとめ

怖いと体が固まるのは、動きを止めて心拍を下げ、危険を観察する「フリーズ反応」が、動物と同じように人にも備わっているから。恐怖がさらに強いと、体の力が抜けて動けなくなる段階まであると考えられています。

固まってしまうのは、体があなたを守ろうとしている証拠。そのことを知っておくだけでも、怖い場面で自分を責めずにすむはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen we suddenly sense danger, we often freeze before we fight or run away. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When we suddenly sense danger, we often freeze before we fight or run away. Many animals do the same. Since predators notice movement, staying still helps an animal avoid attention while it watches the threat. A Dutch researcher explains that freezing is not doing nothing but a brake on movement.

During fight or flight, the heart speeds up, but during freezing, the heart rate drops. In a 2010 study, 50 women stood on a platform that measured tiny body movements and looked at pictures of angry, neutral and happy faces. Only the angry faces reduced their body sway and heart rate. The results suggest that humans also have a built-in freeze response.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

突然危険を感じると、私たちは戦ったり逃げたりする前に、まず固まることがよくあります。多くの動物も同じです。捕食者は動きに気づくので、じっとしていれば、動物は脅威を観察しながら注意を引かずにすみます。オランダの研究者は、固まることは何もしていないのではなく、動きに対するブレーキだと説明しています。

戦うか逃げるかのときは心臓の動きが速くなりますが、固まっているときは心拍数が下がります。2010年の研究では、50人の女性が体の小さな動きを測る台の上に立ち、怒った顔・ふつうの顔・笑顔の写真を見ました。体のゆれと心拍数を減らしたのは、怒った顔だけでした。この結果は、人間にもフリーズ反応が組み込まれていることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. In the 2010 study, which pictures reduced body sway?

Q3. Why might freezing help an animal survive?

重要単語

  • freezeB1
    動詞固まる、すくむThe deer froze in the headlights. 「凍る」から転じて「(恐怖で)動けなくなる」。Freeze!「動くな!」は警察の決まり文句。
  • threatB2
    名詞脅威The brain reacts quickly to a threat. 発音は /θret/(スレット)。動詞 threaten「脅かす」。pose a threat to ~「~に脅威を与える」。
  • heart rateB1
    名詞(句)心拍数My heart rate slowed down for a moment. rate は「割合・速度」。birth rate「出生率」、exchange rate「為替レート」も同じ rate。
  • defensiveB2
    形容詞防御のFreezing is a defensive response. defend(守る)の形容詞形。「(批判に)身構えた」という性格の意味でも使う。
  • immobilityC1
    名詞動けない状態、不動Extreme fear can cause immobility. im-(否定)+mobile(動ける)+-ity。mobility は「移動しやすさ」。
  • predatorB2
    名詞捕食者Many predators react to movement. 反対は prey(獲物)。predator and prey「捕食者と被食者」は生物の長文の定番。
怖い時に体が固まるのは、「戦うか逃げるか」の前に“止まる”防御モードがあるから。オランダの実験では、怒った顔の写真を見るだけで、立っている人の体のゆれが小さくなり心拍も下がったらしい。腰が抜けるのは、その先の段階かも。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Roelofs, Hagenaars & Stins (2010) Facing Freeze: Social Threat Induces Bodily Freeze in Humans, Psychological Sciencedoi.org
  2. Roelofs (2017) Freeze for action: neurobiological mechanisms in animal and human freezing, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org
  3. Hagenaars, Oitzl & Roelofs (2014) Updating freeze: Aligning animal and human research, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
  4. Kozlowska et al. (2015) Fear and the Defense Cascade: Clinical Implications and Management, Harvard Review of Psychiatrydoi.org