心理学ホント

「他人の不幸は蜜の味」は脳にも現れた。妬みは"痛み"、ざまあみろは"ごほうび"だった

「他人の不幸は蜜の味」は脳にも現れた。妬みは"痛み"、ざまあみろは"ごほうび"だった

読む前に予想してみよう!

「妬み」と「嫉妬」は、心理学ではまったく同じ感情として扱われる

研究カード(どんな研究?)
対象
日本の成人など
規模
19人のfMRI実験+質問紙研究
研究の種類
脳画像実験・質問紙調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

日本の研究で、優れた人を妬むと脳の"痛み"に関わる部位が、その人に不幸が起きると"ごほうび"に関わる部位が活動した。妬みには人を伸ばす良性のタイプもある。

ひとことで言うと妬みは心の「痛み」。でも上手に使えば、伸びるためのエンジンにもなる!

もくじ
  1. 妬みは「痛み」、ざまあみろは「ごほうび」
  2. 「妬み」と「嫉妬」は別もの
  3. 妬みには「良い妬み」もある
  4. まとめ

友達がテストで学年1位。SNSで同級生が楽しそうに旅行している。胸の奥が、ちくっ。

一方で、自慢ばかりしていた人が失敗したと聞いて、心のどこかで「ちょっとスッキリ…」と感じてしまったことはありませんか?

そんな自分に、ちょっと落ち込む。でも安心してください。これはほとんどの人が持っている、ごく人間らしい感情です。しかも日本の研究チームが、その感情が脳でどう処理されているかに迫っています。

01妬みは「痛み」、ざまあみろは「ごほうび」

「他人の不幸は蜜の味」ということわざに通じる反応が、脳の活動にも見つかったわけです。この研究は科学誌Scienceに掲載され、世界的に注目されました。

02「妬み」と「嫉妬」は別もの

日本語では混ざりがちですが、心理学では妬み(envy)と嫉妬(jealousy)を区別します。

  • 妬み:相手が持っているもの(成績、才能、お金、人気)を自分も欲しいと感じる。登場人物は2人
  • 嫉妬:自分の大切な関係(恋人、親友)を、第三者に奪われそうと感じる。登場人物は3人

1993年の研究では、人々が語る体験を分析すると、妬みは「劣等感」「あこがれ」と、嫉妬は「疑い」「不安」「失う怖さ」と結びつきやすいことが示されました。

妬みは「2人」、嫉妬は「3人」の感情
妬みは「2人」、嫉妬は「3人」の感情

03妬みには「良い妬み」もある

さらにオランダの研究では、妬みには2種類あることが示されています。

2009年の研究では、相手を引きずり下ろしたくなる「悪性の妬み」と、自分も追いつきたくなる「良性の妬み」を、人は別の体験として感じていました。良性の妬みは「自分ももっと頑張ろう」というやる気につながり、悪性の妬みは相手の立場を傷つけたい(引きずり下ろしたい)という気持ちにつながりやすかったのです。

どちらになりやすいかは、「相手の成功は努力の結果で、自分にも手が届きそう」と思えるかどうかが関係するという見方もあります。

04まとめ

妬みや「ざまあみろ」の気持ちは、脳に組み込まれた、ごく自然な反応です。感じること自体を責める必要はありません。

大切なのは、その感情をどこに向けるか。相手を引きずり下ろすエネルギーを、自分が一歩前に進むエネルギーに変えられたら、妬みはあなたの味方になってくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFeeling a sting when a classmate gets top marks, or secret pleasure when a show-off fails, is very human. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Feeling a sting when a classmate gets top marks, or secret pleasure when a show-off fails, is very human. In 2009, a Japanese research team used brain scans to study these feelings. Nineteen participants read stories about imaginary classmates.

When a classmate was better than them in an area they cared about, participants felt strong envy, and a brain region linked to pain became active. When that classmate later suffered a misfortune, a region linked to reward became active. This pleasure at others' misfortune is called schadenfreude.

Psychologists also separate envy from jealousy. Envy involves two people and wanting what someone else has, while jealousy involves three people and the fear of losing a relationship. Dutch research also found that "benign envy" can motivate people to improve themselves.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

クラスメートがトップの成績をとったときにちくっと感じたり、自慢ばかりの人が失敗したときにひそかに喜んだりするのは、とても人間らしいことです。2009年、日本の研究チームは脳スキャンを使ってこうした感情を研究しました。19人の参加者が、架空のクラスメートについての話を読みました。

自分が大切にしている分野でクラスメートが自分より優れていると、参加者は強い妬みを感じ、痛みに関わる脳の領域が活動しました。その後そのクラスメートが不幸にあうと、報酬に関わる領域が活動しました。他人の不幸を喜ぶこの気持ちは、シャーデンフロイデと呼ばれます。

心理学者は妬みと嫉妬も区別しています。妬みは2人の間のもので、他人が持っているものを欲しがることであり、嫉妬は3人の間のもので、関係を失うことへの恐れです。オランダの研究では、「良性の妬み」が人に自分を高める意欲を与えうることもわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is schadenfreude?

Q2. How is jealousy different from envy?

Q3. What does the Dutch research suggest?

重要単語

  • envyB2
    名詞・動詞妬み、うらやみ/うらやむEnvy can push you to work harder. envy A B「AのBをうらやむ」(I envy you your talent.)の語法に注意。形容詞 envious。
  • jealousyB2
    名詞嫉妬Jealousy is about the fear of losing someone. 形容詞 jealous。be jealous of ~「~に嫉妬する」。envy との違いが入試頻出。
  • schadenfreudeC2
    名詞他人の不幸を喜ぶ気持ちSchadenfreude is a word borrowed from German. ドイツ語 Schaden(損害)+Freude(喜び)。英語に入った借用語。
  • benignC1
    形容詞良性の、悪意のないBenign envy motivates people to improve. g は発音しない(ビナイン)。医学では benign tumor「良性腫瘍」。反対は malignant。
  • maliciousC1
    形容詞悪意のあるMalicious envy wants others to fall. malice(悪意)の形容詞。mal-=悪い(malfunction, malnutrition)。
  • misfortuneB2
    名詞不幸、不運Some people enjoy a rival's misfortune. mis-(悪い)+fortune(運)。suffer a misfortune「不幸にあう」。
  • attainableC1
    形容詞達成可能な、手が届くBenign envy grows when success seems attainable. attain(達成する)+-able。attainable goal「達成可能な目標」。

4コマでわかる

「他人の不幸は蜜の味」は脳にも現れた。妬みは"痛み"、ざまあみろは"ごほうび"だったの4コマ漫画
自分より優秀な人の話を読むと、脳の"痛み"に関わる部分が反応。そしてその人に不幸が起きると、今度は"ごほうび"に関わる部分が反応した——日本の研究チームが脳で示した「他人の不幸は蜜の味」。妬みにも使い道はある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Takahashi et al. (2009) When your gain is my pain and your pain is my gain: Neural correlates of envy and schadenfreude, Sciencedoi.org
  2. van de Ven, Zeelenberg & Pieters (2009) Leveling up and down: The experiences of benign and malicious envy, Emotiondoi.org
  3. Parrott & Smith (1993) Distinguishing the experiences of envy and jealousy, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Smith & Kim (2007) Comprehending envy, Psychological Bulletindoi.org