猫が多い国ほど幸福度が高く、猫の寄生虫の感染が多い国ほど低かった【93か国】

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猫が多い国ほど、猫が広める寄生虫トキソプラズマの新しい感染も多かった
93か国の分析では、猫が多い国ほど新しい感染の指標はむしろ低かった。豊かな国では猫を室内で飼うことが多いためでは、と著者らは推測している。
- 対象
- 93か国の国別データ(幸福度・人口あたりの猫の数・妊婦の抗体陽性率・経済指標)
- 規模
- 93か国
- 研究の種類
- 生態学的相関研究(横断・探索的)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
93か国の比較で、猫が多い国ほど幸福度が高く、寄生虫トキソプラズマの新しい感染の指標が高い国ほど低かった。ただし国単位の相関で、個人に当てはまるとは限らない。
ひとことで言うと猫が多い国は幸せそう。でも猫のおかげとは限らない!
「猫がいると幸せになれる」。猫好きなら、うなずきたくなる話ですよね。
2026年9月30日、学術誌『PLOS One』に、それを国のレベルで確かめたような研究が載りました。93か国を並べると、人口あたりの猫が多い国ほど、国の幸福度が高かったのです。
しかも同じ研究で、猫を介して広がる寄生虫「トキソプラズマ」の新しい感染が多い国ほど、幸福度が低いという結果も出ました。猫は幸せを運ぶのか、不幸の種をまくのか。データを読み解くと、まったく別の姿が見えてきます。
0193か国の「猫」と「寄生虫」を並べてみた
結果、幸福度と猫の多さの相関係数は0.62とかなり強め。一方、最近の感染(IgM)とはマイナス0.54、過去の感染(IgG)とはマイナス0.33でした。
さらに、猫の数・医療費・IgM・IgGをまとめて分析すると、国ごとの幸福度の差の約47%を説明でき、統計的にはっきり関連が残ったのは猫の多さとIgMの2つだった、と著者らは報告しています。
02トキソプラズマは「ネズミの心」を変える寄生虫
トキソプラズマは、人を含むほぼすべての恒温動物に感染できる、とても小さな原虫です。そして猫は、この寄生虫が子孫を残すための「終宿主」。猫のふんに出た寄生虫や、加熱が足りない肉などから人にも感染します。世界では成人の1〜3割ほどが、気づかないまま感染していると推定されています。
有名なのがネズミの研究です。ベルドイらは2000年、ネズミは本来、猫の気配がする場所を避けるのに、感染したネズミではその警戒が崩れ、逆に引き寄せられる場合さえあると報告しました。猫に食べられやすくなれば、寄生虫は猫の体に戻れる、という解釈です。
では、人の心にも影響するのか。人の性格や心の病気との関係を調べる研究も、数多く行われてきました。
03どんでん返し:猫が多い国ほど、最近の感染は少なかった
猫が寄生虫を広めるなら、猫が多い国ほど感染も多そうですよね。ところが分析では逆で、猫が多い国ほど、最近の感染の指標は低かったのです。
カギは「国の豊かさ」だと考えられます。猫の多さは1人あたりGDPと0.79、幸福度もGDPと0.80という強い相関がありました。著者らは、豊かな国では猫を室内で飼い、市販のフードを与え、動物病院にも連れていくことが多いため、感染が広がりにくいのではないかと推測しています。
つまり「猫が多い国」は、「豊かな国」の目印なのかもしれません。猫が人を幸せにしたのか、豊かさが猫と幸せの両方を連れてきたのか。このデータでは区別できません。

04国の相関は「あなたの話」ではない
この研究でいちばん大事なのは、生態学的誤謬(ごびゅう)という落とし穴です。国や地域の平均どうしの相関を、そのまま個人に当てはめてしまう誤りのこと。著者ら自身も、結果を個人の猫の飼育や感染リスクに当てはめてはいけないと明記しています。
実際、個人のデータでは話が変わります。内閣府の2019年の調査(1万293人)を分析した遠藤らの2025年の研究では、猫のような室内飼いのペットを飼っているかどうかと幸福度に、はっきりした関係は見られませんでした。ペットを飼う人は収入が高く、広い家に住む傾向があったことも報告されています。
寄生虫の側も同じです。ニュージーランドのダニーデンで同じ時期に生まれた人たちを長く追跡している研究から、抗体を調べた837人を分析したサグデンらの2016年の研究では、感染と心の病気・衝動性・性格・認知機能の関係を示す証拠はほとんど見つかりませんでした。遺伝子のデータで因果関係を推定した2026年の研究(パンら)でも、ヨーロッパ系の人々で、調べた心の病気やリスクを取る行動を、感染が引き起こすという因果関係は支持されませんでした(小さな影響までは否定できない、としています)。
05まとめ
「猫が多い国ほど幸福度が高い」は、国単位の相関としてはホント。でも「猫を飼えば幸せになれる」「猫の寄生虫が人を不幸にする」は、このデータからは言えません。
猫の数は、その国の豊かさや、猫との暮らし方を映す鏡なのかもしれません。数字が強く見えるときほど、「これは誰についての数字?」と問いかけてみてください。
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do cats make a country happy? Scientists looked at 93 countries. In countries with more cats per person, people said they were happier. In countries where more people had a new infection from Toxoplasma, a tiny parasite that cats can spread, people were less happy.
But there was a surprise. Countries with many cats tended to have fewer new infections. Scientists think rich countries often keep cats inside. So money may be the real link between cats and happiness.
79 words ・ CEFR A2
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猫は国を幸せにするのでしょうか。科学者たちは93か国を調べました。1人あたりの猫が多い国では、人々は自分がより幸せだと答えました。猫が広めることのある小さな寄生虫、トキソプラズマに新しく感染した人が多い国では、人々はあまり幸せではありませんでした。
でも、意外なことがありました。猫が多い国ほど、新しい感染は少ない傾向があったのです。科学者たちは、豊かな国では猫を家の中で飼うことが多いと考えています。だから、猫と幸せを本当に結びつけているのは、お金なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
93か国で猫の数・寄生虫の感染・幸福度の関係を調べた研究の話なので B。
Q2. How many countries did the scientists look at?
第2文に Scientists looked at 93 countries. とあるので B。
Q3. In this passage, a "parasite" is ...
a tiny parasite that cats can spread(猫が広めることのある小さな寄生虫)とあり、ほかの生き物の体内で暮らす小さな生き物を指すので C。
A new study in the journal PLOS One compared 93 countries using public data on happiness, wealth, health spending and cats. Countries with more cats per 10,000 people tended to be happier. Countries where more pregnant women showed signs of a recent Toxoplasma infection tended to be less happy. The study compares whole countries, so it says nothing about whether a cat would make you happier.
Toxoplasma is a tiny parasite, and cats play a central part in its life cycle. You might expect more cats to mean more infections. The data showed the opposite. Cat numbers were closely tied to national wealth, and the researchers think people in richer countries are more likely to keep their cats indoors and take them to the vet.
125 words ・ CEFR B1
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学術誌『PLOS One』に載った新しい研究は、幸福度、豊かさ、医療費、そして猫に関する公開データを使って93か国を比較した。人口1万人あたりの猫が多い国ほど、幸福度が高い傾向があった。最近のトキソプラズマ感染の兆候を示す妊婦が多い国ほど、幸福度が低い傾向があった。この研究は国全体どうしを比べているので、猫を飼えばあなたが幸せになるかどうかについては何も言えない。
トキソプラズマは小さな寄生虫で、猫はその生活環で中心的な役割を担っている。だから猫が多いほど感染も多いと予想するかもしれない。データが示したのは逆だった。猫の数は国の豊かさと密接に結びついており、研究者たちは、豊かな国の人々は猫を室内で飼い、動物病院に連れていく傾向が強いからだと考えている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
国ごとの関係を報告しつつ、it says nothing about whether a cat would make you happier と個人には当てはまらないことを述べているので C。
Q2. Whose test results were used to measure Toxoplasma infection?
Countries where more pregnant women showed signs of a recent Toxoplasma infection とあり、妊婦のデータを使っているので C。
Q3. Why might countries with many cats have fewer infections, according to the researchers?
最終文で、豊かな国の人々は猫を室内で飼い、動物病院に連れていくからだと研究者が考えていると述べているので B。
Researchers in Mexico, Finland, Latvia and the US gathered public data on 93 countries and asked a playful question with a serious side. Do cats, and the parasite they carry, help explain why some nations are happier than others? Happiness scores were higher in countries with more cats per person and lower where recent Toxoplasma infections were more common.
When cats, health spending and two infection measures were analyzed together, the model accounted for about 47 percent of the differences in happiness. That sounds impressive until you check what was left out. GDP and income level were dropped from the model because they overlapped so heavily with each other, and cat numbers rose and fell closely with GDP. The infection figures came from pregnant women, some tested decades ago, and the cat counts mix pets with strays.
A deeper problem is the ecological fallacy, the error of assuming that a pattern among countries also holds for the people living in them. The authors warn against that step. Studies of individuals tell a different story. In a study using a Japanese government survey of 10,293 people, owning an indoor pet such as a cat showed no clear link with well-being.
199 words ・ CEFR B2
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メキシコ、フィンランド、ラトビア、米国の研究者たちが93か国の公開データを集め、遊び心がありながら真面目な面もある問いを立てた。猫と、猫が運ぶ寄生虫は、なぜある国がほかの国より幸せなのかを説明する助けになるのか。幸福度は、1人あたりの猫の数が多いほど高く、最近のトキソプラズマ感染が多いほど低かった。
猫、医療費、2つの感染指標をまとめて分析すると、そのモデルは幸福度の差の約47%を説明した。印象的に聞こえるが、何が除かれていたかを確かめると話は変わる。GDPと所得水準は、互いの重なりが大きすぎるためモデルから外されており、猫の数はGDPと密接に連動していた。感染の数値は妊婦を調べたもので、中には数十年前の検査も含まれ、猫の数には飼い猫と野良猫が混ざっている。
さらに深い問題は生態学的誤謬、つまり国どうしのパターンがそこに住む人々にも当てはまると思い込む誤りだ。著者らもその飛躍を戒めている。個人を調べた研究は別の姿を示す。1万293人を対象にした日本政府の調査を使った研究では、猫のような室内飼いのペットを飼っていることと幸福度との間に、はっきりした関係は見られなかった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
93か国の結果を紹介したうえで、除外された変数やデータの問題、生態学的誤謬を論じているので A。
Q2. Why were GDP and income level dropped from the model?
because they overlapped so heavily with each other とあるので B。
Q3. Which statement would the writer most likely agree with?
生態学的誤謬を「さらに深い問題」とし、個人の調査では関係が見られなかった例を挙げているので C。47%は国ごとの差を説明した割合で、個人の幸福が上がる割合ではない。
重要単語
- parasiteB2名詞寄生虫・寄生生物Some parasites can live inside an animal for years.
ギリシャ語の「他人の食卓で食べる者」が語源。比喩で「他人に頼って生きる人」の意味もある。形容詞は parasitic。 - correlationB2名詞相関(2つが一緒に増減する関係)A correlation between two things is not proof that one causes the other.
co-(共に)+relation(関係)。Correlation does not imply causation.(相関は因果を意味しない)は入試長文の定番フレーズ。 - ecological fallacyC1名詞(句)生態学的誤謬(集団の傾向を個人に当てはめる誤り)Saying every person in a happy country is happy is an ecological fallacy.
ここでの ecological は「環境保護」ではなく「集団・地域単位の」という統計用語。fallacy は「誤った推論」。 - infectionB1名詞感染Washing your hands lowers the risk of infection.
動詞 infect「感染させる」、形容詞 infectious「感染力のある」。be infected with ~ で「~に感染している」。 - confounding factorC1名詞(句)交絡因子(両方に影響する隠れた要因)Wealth may be a confounding factor in this study.
confound は「混同させる」。今回なら「国の豊かさ」が猫の数と幸福度の両方に関わる候補。 - well-beingB2名詞幸福・心身の満たされた状態Good sleep supports well-being.
happiness より広く、健康や生活の満足まで含む語。subjective well-being は「主観的幸福感」。
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93か国を比べたら「猫が多い国ほど幸福度が高い」「猫が運ぶ寄生虫の感染が多い国ほど低い」という結果に。ところが猫が多い国ほど、その感染の指標はむしろ低めだったらしい。カギは国の豊かさかも。
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- Borráz-León, Rantala, Krams & Maestripieri (2026) Wealth, health, cats and Toxoplasma gondii: An ecological correlational study of subjective well-being across 93 countries, PLOS Onedoi.org
- Berdoy, Webster & Macdonald (2000) Fatal attraction in rats infected with Toxoplasma gondii, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
- Sugden et al. (2016) Is Toxoplasma Gondii Infection Related to Brain and Behavior Impairments in Humans? Evidence from a Population-Representative Birth Cohort, PLOS ONEdoi.org
- Pang et al. (2026) Does Toxoplasma gondii infection have a causal impact on human psychopathology? A Mendelian randomization analysis, PLOS Pathogensdoi.org
- Endo et al. (2025) Associations Between Pet Type (Co-Walkable, Indoor-Only, and Ornamental Pets) and Well-Being: Findings from a Large-Scale Cross-Sectional Study in Japan, International Journal of Environmental Research and Public Healthdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









