語学・英語学習ビミョー

語彙サイズテストで「あなたの英単語力」は測れる? 研究者が教える、正しい受け方と読み方

語彙サイズテストで「あなたの英単語力」は測れる? 研究者が教える、正しい受け方と読み方

読む前に予想してみよう!

選択式の語彙サイズテストの結果は、本当に知っている単語の数よりも高めに出ることがある

研究カード(どんな研究?)
対象
日本人大学生・英語母語話者など
規模
197人のテスト検証ほか
研究の種類
テスト妥当性研究+大規模調査
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

語彙サイズテストは、自分の単語力の「だいたいの位置」を知るのに便利。ただし選択式は当てずっぽうで高めに出やすく、数字は「誤差つきの目安」として読むのが正解。

ひとことで言うと単語テストの数字は「だいたいの目安」。高めに出やすいことも知っておこう!

もくじ
  1. 研究者が作った「語彙サイズテスト」のしくみ
  2. 弱点①:当てずっぽうで「高め」に出る
  3. 弱点②:10問で1,000語を代表できる?
  4. ちなみに、母語話者はどれくらい?
  5. まとめ

「あなたの英語の語彙は、推定6,500語です!」

ネット上には、こうした語彙サイズテストがたくさんあります。数分で自分の単語力が数字で出るのは、ちょっとワクワクしますよね。

でも、その数字はどのくらい信用していいのでしょうか。テストの研究者たち自身が、その限界を論文で詳しく検討しています。

01研究者が作った「語彙サイズテスト」のしくみ

よく知られているのが、ニュージーランドのポール・ネーションらが作ったVocabulary Size Test(VST)です。

  • 英語の単語を使われる頻度順に1,000語族ずつのグループに分ける
  • 各グループから10語ずつ選び、選択式で意味を問う
  • 14グループ×10問=140問で、よく使う14,000語族までをカバー
  • 1問正解=100語族として、合計で語彙サイズを推定する

つまり、全部の単語を調べる代わりに、一部を抜き出して全体を推測するしくみです。

森の一部の木を数えて、森全体の木の数を推定する。語彙テストも同じ発想
森の一部の木を数えて、森全体の木の数を推定する。語彙テストも同じ発想

02弱点①:当てずっぽうで「高め」に出る

ただし、選択式には弱点があります。

スウェーデンなどの研究者が2015年に発表した研究では、VSTの選択式の問題の結果を、別の方法で確かめた単語の知識と比べました。すると、両者の結果にはズレがあり、選択式では推測などによって知識が高めに出る可能性が指摘されました。また、より正確に測るにはもっと多くの単語を出題する必要があることも示されました。

選択肢があると、消去法や、なんとなくの推測で正解できてしまうからです。

03弱点②:10問で1,000語を代表できる?

もう一つの問題は、サンプルの少なさです。1,000語族のグループを10問だけで代表させると、たまたま知っている単語が出れば高く、知らない単語が出れば低くなります。

VSTの開発者であるネーション自身も加わった2021年の論文では、

  • 選択式による過大評価
  • 1つの単語を知っていれば、その派生語も全部わかるとみなす数え方の問題
  • 少ない問題数による精度の限界

を挙げ、既存のテストは多くの目的に対して十分な精度がないと結論しています。

04ちなみに、母語話者はどれくらい?

参考までに、ベルギーの心理学者ブリスバールトらは2016年、大規模なオンライン調査などから、アメリカの20歳の英語母語話者は、平均で約4万2000レンマ(辞書の見出し語に近い単位)を知っていると推定しました。語族に直すと約1万1000語族です。

05まとめ

語彙サイズテストは、自分の単語力の「だいたいの現在地」を知るのに便利な道具です。ただし、数字はあくまで誤差つきの推定値。

一喜一憂するより、教材選びと成長の記録に使う。それが、研究者たちが教えてくれる、いちばん賢い使い方です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Vocabulary Size Test, created by Paul Nation and his colleagues, divides English words into groups of… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Vocabulary Size Test, created by Paul Nation and his colleagues, divides English words into groups of 1,000 word families according to how often they are used. It asks 10 multiple-choice questions from each group, making 140 questions in total, and each correct answer represents 100 word families. In 2010, Beglar tested 19 native speakers and 178 Japanese learners and found that the test was highly reliable.

However, a 2015 study found that multiple-choice answers may overestimate knowledge because learners can guess or use elimination. In 2021, a paper written with Nation himself concluded that existing tests are not accurate enough for many purposes.

104 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ポール・ネーションらが作った語彙サイズテストは、英単語を使われる頻度によって1,000語族ずつのグループに分けます。各グループから選択式の問題を10問ずつ、合計140問出し、1問の正解が100語族を表します。2010年、ベグラーは英語の母語話者19人と日本人学習者178人にテストを受けてもらい、テストの信頼性が非常に高いことを見いだしました。

しかし2015年の研究では、学習者は推測したり消去法を使ったりできるため、選択式の解答は知識を過大に見積もる可能性があることがわかりました。2021年には、ネーション本人も加わった論文が、既存のテストは多くの目的に対して十分な精度がないと結論づけました。

4択リーディングクイズ

Q1. How many questions does the full test have?

Q2. Why might multiple-choice tests overestimate knowledge?

Q3. How should learners use their scores?

重要単語

  • vocabulary sizeB2
    名詞(句)語彙サイズ(知っている単語の数)I took a test to check my vocabulary size. 「語彙の広さ」。語彙の「深さ」(vocabulary depth、どれだけよく知っているか)と区別される。
  • multiple-choiceB1
    形容詞選択式のMultiple-choice tests are easy to score. multiple-choice question「多肢選択問題」。共通テストのほとんどがこの形式。
  • guessingB1
    名詞当てずっぽう・推測Guessing can make your score look higher. educated guess「根拠のある推測」は、知識をもとに推測するという良い意味で使われる。
  • overestimateC1
    動詞過大に見積もるThe test may overestimate what you know. over(過度に)+estimate。反対は underestimate(過小評価する)。内容一致で頻出。
  • lemmaC1
    名詞レンマ(辞書の見出し語の単位)"Run", "runs" and "ran" belong to one lemma. 語族(word family)より小さい単位。数え方の違いで語彙数の推定値は大きく変わる。
  • sampleB1
    名詞・動詞標本・抜き出したもの/抜き出して調べるThe test uses a small sample of words. 一部から全体を推定するのが「標本調査」。sample size(標本の大きさ)は研究の限界でよく出る語。
  • precisionC1
    名詞精度、正確さThe test lacks precision for some purposes. 形容詞 precise。accuracy(正確さ)とほぼ同義だが、precision は「ばらつきの小ささ」を指すこともある。

動画でもっと知る

「あなたの語彙は◯◯語!」。語彙サイズテストは便利だけど、研究者によると選択式は“当てずっぽう”で高めに出やすいらしい。ちなみにアメリカの20歳の母語話者は、平均約4万2000語(レンマ)を知っているという推定も。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Beglar (2010) A Rasch-based validation of the Vocabulary Size Test, Language Testingdoi.org
  2. Gyllstad, Vilkaitė & Schmitt (2015) Assessing vocabulary size through multiple-choice formats, ITL - International Journal of Applied Linguisticsdoi.org
  3. Stoeckel, McLean & Nation (2021) Limitations of Size and Levels Tests of Written Receptive Vocabulary Knowledge, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  4. Brysbaert et al. (2016) How Many Words Do We Know? Practical Estimates of Vocabulary Size, Frontiers in Psychologydoi.org