鳥肌は「毛皮の名残」だけじゃなかった。毛を育てるスイッチにもなっていたらしい

読む前に予想してみよう!
鳥肌は、毛の根元にある小さな筋肉が縮むことで起こる
立毛筋という筋肉が縮んで毛が立ち、根元の皮ふが盛り上がる。
- 対象
- マウス/音楽を聴く成人
- 規模
- マウス実験/成人10人(脳画像)
- 研究の種類
- 動物実験・脳画像研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
鳥肌は毛の根元の小さな筋肉が縮んで起こる。祖先の毛皮をふくらませた名残とされるが、マウスでは毛を作る細胞を目覚めさせる働きも見つかった。
ひとことで言うと鳥肌は、毛を立てる小さな筋肉のしわざ。毛を育てる役目もあるかも!
寒い朝、ゾクッとした瞬間。ライブで好きな曲のサビがきた瞬間。腕にぶわっと鳥肌が立つこと、ありますよね。
鳥肌は、よく「人間が毛むくじゃらだった頃の名残」と説明されます。でも、2020年の研究で、それだけではない意外な役目が見つかりました。
01鳥肌の正体は「小さな筋肉」
皮ふの毛の1本1本の根元には、立毛筋(りつもうきん)というとても小さな筋肉がついています。
寒さや恐怖を感じると、交感神経(体を「緊急モード」にする自律神経)が働き、この立毛筋がキュッと縮みます。すると毛がピンと立ち、根元の皮ふが盛り上がって、羽をむしった鳥の皮ふのようなポツポツができるわけです。
自分の意思では動かせない筋肉なので、「鳥肌を立てて」と言われても、ふつうはできません。
02毛皮をふくらませる「天然のダウンジャケット」
毛がたっぷりある動物では、毛が立つと、毛と毛の間に空気の層ができます。空気は熱を伝えにくいので、ダウンジャケットのように体温を逃がしにくくなります。
また、ネコが怒ったときに毛を逆立てるように、体を大きく見せて相手をおどかす効果もあります。
人間は体毛がうすくなったので、鳥肌が立ってもあまり暖かくはなりません。だから「名残(なごり)」と言われてきたわけです。

03実は「毛を育てるスイッチ」だった
幹細胞とは、いろいろな細胞のもとになる「タネ」のような細胞。毛包幹細胞は、毛を作る細胞を生み出すタネです。
つまり、鳥肌をつくる仕組みは、寒さにすばやく反応して毛を立てると同時に、長い目で見て新しい毛を生やす準備をするという、2つの時間スケールで働いていた可能性があるんです。
これはマウスでの結果なので、人の髪の毛にそのまま当てはまるかはまだわかりません。
とはいえ、「名残でしかない」と思われていた仕組みに、ちゃんと今も意味のある役目があるかもしれない、というのはわくわくする話。体の中の「いらなそうなもの」を見直すきっかけにもなりました。
04感動で鳥肌が立つのはなぜ?
音楽や映画で鳥肌が立つのは、寒さとは関係ありませんよね。
カナダ・マギル大学のブラッド(Blood)さんとザトーレ(Zatorre)さんは、2001年に『PNAS』で、音楽で背筋がゾクッとする瞬間には、脳のごほうびや感情に関わる部分の活動が変化していると報告しました。
同じ研究グループは2011年、音楽でゾクッとする瞬間に、脳の報酬系でドーパミン(快感に関わる物質)が放出されていることも報告しています(『Nature Neuroscience』)。また、ドイツとオーストリアの研究者は、腕の鳥肌をカメラで客観的に測り、音楽や映画で「心を動かされた」ときに鳥肌が立ちやすいことを報告しています。
感動で心がゆさぶられると交感神経が働き、寒さのときと同じスイッチが押される、と考えられています。
05まとめ
鳥肌は、毛を立てる小さな筋肉のしわざ。祖先の毛皮の名残というだけでなく、毛を育てる細胞に信号を届ける役目もあるかもしれない――そんな発見がマウスで見つかりました。
次に鳥肌が立ったら、「今、はるか昔から受けつがれてきた仕組みが動いてるんだな」と思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerGoosebumps appear when tiny muscles called arrector pili muscles, attached to the base of each hair, contract.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
You get goosebumps when you are cold or when a song moves you. Goosebumps happen when tiny muscles at the base of each hair get shorter.
Then the hair stands up. For animals with a lot of fur, this keeps them warm. Humans have little hair, so people thought goosebumps were just left over from the past. But a 2020 study in mice found that these muscles and nerves also help grow new hair.
74 words ・ CEFR A2
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寒いときや、歌に心を動かされたとき、鳥肌が立ちます。鳥肌は、毛の1本1本の根元にある小さな筋肉が縮むことで起こります。
すると毛が立ちます。毛がたくさんある動物にとっては、これで体が温かく保たれます。人間には毛が少ないので、鳥肌は昔の名残にすぎないと考えられてきました。しかし2020年のマウスの研究で、これらの筋肉と神経が新しい毛を育てる手助けもしていることがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
鳥肌の仕組みと、2020年の新しい発見について書かれているので B。
Q2. What animals were used in the 2020 study?
a 2020 study in mice とあるので C。
Q3. In this passage, "fur" means ...
fur は「動物の毛皮・ふさふさした毛」。animals with a lot of fur から A。
Goosebumps appear when tiny muscles called arrector pili muscles, attached to the base of each hair, contract. This happens when the sympathetic nerves, which prepare the body for emergencies, become active because of cold or fear. In furry animals, raised hair traps a layer of air that keeps them warm, and it can also make them look bigger to enemies. Because humans have little body hair, goosebumps have long been seen as a leftover from evolution.
However, a 2020 study at Harvard University found that in mice, these nerves and muscles also send signals to stem cells that make hair. When the mice were cold, these cells started making new hair.
111 words ・ CEFR B1
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鳥肌は、毛の1本1本の根元についている立毛筋という小さな筋肉が縮むと現れます。これは、体を緊急事態に備えさせる交感神経が、寒さや恐怖によって働くと起こります。毛の多い動物では、立った毛が空気の層をとじこめて体を温かく保ち、また敵に対して体を大きく見せることもできます。人間は体毛が少ないので、鳥肌は長い間、進化の名残だと考えられてきました。
しかし2020年のハーバード大学の研究で、マウスではこれらの神経と筋肉が、毛を作る幹細胞にも信号を送っていることがわかりました。マウスが寒さを感じると、これらの細胞が新しい毛を作り始めたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
進化の名残と考えられてきたが、毛を作る幹細胞に信号を送る役目もあるかもしれない、という流れなので D。
Q2. According to the passage, why does raised hair keep furry animals warm?
raised hair traps a layer of air that keeps them warm とあるので A。
Q3. What can we infer about the 2020 finding?
in mice と明記されており、人間にも当てはまるかはまだわからないと推測できるので B。
Goosebumps occur when the arrector pili, tiny muscles attached to each hair follicle, contract under the control of the sympathetic nervous system, which is activated by cold or fear. In furry mammals, the resulting raised hair traps an insulating layer of air and can make an animal look larger to a rival. Because humans have so little body hair, the reflex has traditionally been regarded as an evolutionary leftover.
A 2020 study published in Cell, however, suggests it may still serve a purpose. Working with mice, Shwartz, Hsu and colleagues found that the muscle acts as a bridge linking sympathetic nerves to hair follicle stem cells. When cold activated the nerves, the signal also reached these stem cells and triggered new hair growth.
The same system therefore seems to work on two time scales: raising hair immediately and preparing for new fur over the longer term. These experiments relied on genetically modified mice, and it is not known whether the same link works in human skin, let alone whether it could help with hair loss. Goosebumps triggered by music are a different story, since they appear to involve the brain's reward system as well.
194 words ・ CEFR B2
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鳥肌は、毛包(毛の根元)の1つ1つについた小さな筋肉である立毛筋が、交感神経の制御のもとで縮むことで起こります。交感神経は寒さや恐怖によって働きます。毛の多いほ乳類では、その結果立った毛が断熱性のある空気の層をとじこめ、ライバルに対して体を大きく見せることもできます。
人間は体毛がとても少ないため、この反射は伝統的に進化の名残とみなされてきました。しかし、2020年に科学誌『Cell』に発表された研究は、鳥肌が今も役目を果たしているかもしれないことを示しています。シュワルツさん、スーさんらはマウスを使い、この筋肉が交感神経と毛包幹細胞をつなぐ橋の役割をしていることを発見しました。寒さで神経が働くと、その信号はこれらの幹細胞にも届き、新しい毛の成長を引き起こしたのです。
つまり同じ仕組みが、すぐに毛を立てることと、長期的には新しい毛皮に備えることという、2つの時間スケールで働いているようです。これらの実験は遺伝子改変マウスにたよったもので、同じつながりが人間の皮膚でも働くのか、ましてや脱毛の助けになるのかはわかっていません。音楽で立つ鳥肌は別の話で、脳の報酬系も関わっているようです。
4択リーディングクイズ
Q1. What was traditionally believed about human goosebumps?
the reflex has traditionally been regarded as an evolutionary leftover とあるので C。
Q2. What does "two time scales" refer to in the passage?
コロンの後に raising hair immediately and preparing for new fur over the longer term と説明されているので A。
Q3. Why is it not known whether the findings apply to human hair?
These experiments relied on genetically modified mice とあり、人間の皮膚でも同じかどうかはわかっていないので D。
重要単語
- goosebumpsB2名詞鳥肌I got goosebumps when the song started.
goose(ガチョウ)+bumps(ぶつぶつ)。日本語は「鳥」、英語は「ガチョウ」の肌。get goosebumps で「鳥肌が立つ」。 - arrector pili muscleC1名詞(句)立毛筋The arrector pili muscle makes hair stand up.
ラテン語で「毛を立てるもの」。pili は「毛」の意味。 - sympathetic nerveC1名詞(句)交感神経Cold activates the sympathetic nerves.
sympathetic は普段「同情的な」の意味。反対の働きをするのは parasympathetic nerve(副交感神経)。 - stem cellB2名詞(句)幹細胞Stem cells can turn into other kinds of cells.
stem は「茎・幹」。そこから枝分かれしていろいろな細胞になるイメージ。iPS細胞の話題で頻出。 - evolutionB2名詞進化Goosebumps may be a leftover from evolution.
動詞は evolve(進化する)。the theory of evolution「進化論」。revolution(革命)とつづりを混同しないこと。 - contractB2動詞・名詞収縮する/契約Muscles contract when they work.
動詞は /kənˈtrækt/、名詞「契約」は /ˈkɑːntrækt/ とアクセントが変わる。contract a disease「病気にかかる」も入試頻出。 - insulateC1動詞断熱する、隔離するA layer of air insulates the body.
ラテン語 insula(島)から。島のように切り離す→熱を伝えない。insulation「断熱材」。
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寒いときや感動したときの鳥肌、昔の毛皮をふくらませていた名残とされるけど、それだけじゃないらしい。マウスの研究で、鳥肌をつくる神経と筋肉が「毛を作る細胞」を目覚めさせることがわかったとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Shwartz et al. (2020) Cell Types Promoting Goosebumps Form a Niche to Regulate Hair Follicle Stem Cells, Celldoi.org
- Blood & Zatorre (2001) Intensely pleasurable responses to music correlate with activity in brain regions implicated in reward and emotion, PNASdoi.org
- Salimpoor et al. (2011) Anatomically distinct dopamine release during anticipation and experience of peak emotion to music, Nature Neurosciencedoi.org
- Benedek & Kaernbach (2011) Physiological correlates and emotional specificity of human piloerection, Biological Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










